Working in Japan #12月〜年末年始編〜


日本で働いていることについて、みなさんはどうお考えでしょうか?
「どう思うかって聞かれても・・・」
そんなこと聞かれても困ってしまいますね。

私も日本で生まれ、日本で育ち、日本の会社で働いています。
唯一、他と違うかな?と思うことは、その会社が多国籍メンバーで構成されているということ。

「Working in Japan(日本で働く)」シリーズでは、日本の職場で当たり前に行われている慣習や文化、これを少し紐解いてみて、更に外国人はこれらをどう思っているのか?毎月紹介していきたいと思います。

 

 

年末年始、日本はここが面白い

ビジネスシーンにおいて、年末年始に避けては通れないものってありますね。
時代は変わり、今では「しない」という選択肢もあると思います。

果たしてそれらのルーツは何だったのでしょうか?
みなさんは外国人に説明が出来ますか?

 

【年末 -The end of the year-】

①お歳暮(OSEIBO=gift)をクライアントに送る

日頃お世話になっているお取引先などに感謝の気持ちを込め、「これからも宜しくお願いします」と贈り物を送るのがお歳暮のイメージでしょうか。

日本でお歳暮の歴史がはじまったのは室町時代で、そのルーツは中国の季節毎に神様にお供え物をするお祭りだったと言われています。その後江戸時代には、商人が年末に日持ちがする贈り物を持参して挨拶周りをしていた習慣から、一気に世間に広まり、明治30年頃には現在のようなお歳暮の形になったと言われています。

しかし現在では、公務員がお歳暮のような贈答品や金銭を受け取ることを禁止されていたり、企業方針として受取を辞退したり、個人情報保護法や社員と取引先との癒着の観点からお歳暮を禁止されている企業もあります。

もともとは風呂敷につつんで直接持参するのがマナーでしたが、今は宅急便で送るケースも増えているようです。この時期には会社に届いたお歳暮が社員に配られるという場面も多く見られます。

 

 

 

外国人の意見

 

日本人は旅行や休日にどこかに行く度に、職場にお土産を買ってくる人もいるけど、ヨーロッパにはそのような文化はない。なのでお歳暮と言ってクライアントにギフトを送るのも珍しいです。もし、何か他の会社から物をもらったら「相手は何か見返りを求めている?!」と勘ぐってしまうかも。

日本は年の締めくくりとして節目を重んじるけど、1月になったらリフレッシュ・リスタートという感じはないので、クライアントにはクリスマス前にホリデーの連絡をメールを送るぐらいです。

 

 

②忘年会(BOUNENKAI)多発

今年もあと僅か、1年の功績を労おう、来年もよろしくお願いします。
そんな思いからクライアント・会社・部署・プロジェクトチーム・外部コミュニティ、いろんな単位で忘年会が開かれます。忘年会では出し物があったり、胴上げが行われたり、無礼講があったり、路上で酔いつぶれ寝てしまう人が出たり・・・少しハメを外す印象があります。

忘年会の歴史は、鎌倉時代に年末に「年忘れ」と呼ばれる、貴族や武士などが連歌を読み合い、優雅に年末を過ごすという厳粛な会が起源と言われています。

さらに江戸時代に入ると、庶民が「その年の慰労に杯を交わし、お祭り騒ぎをする」という風習へ変化していきました。明治時代以降には、主に官僚や学生を中心に忘年会が広く行われており、官僚は冬のボーナスをもって飲みに行こう!という流れから、学生は年初めに帰郷する者が多いので、みんなで集まれる年末に宴会をしようという流れから、年末に忘年会を行うことが定着していったようです。さらに現在の「企業忘年会スタイル」は昭和に入ってから確立されました。

 

 

 

外国人の意見

クリスマスの前にオフィスで飲み物とケーキぐらいはやるかもしれないけど、居酒屋で宴会コースみたいな日本の文化は面白い。それに海外ではそういったイベントは、自分の予定を優先して断るのも普通です。日本では絶対に参加しなければいけない、というイメージがある。それにそういったイベントには家族が参加できるものも多いです。

 

③鉄道会社が転落事故防止運動をはじめる

ホームで起こる人身障害事故のうち6割がお酒に酔った人によるものだそうです。鉄道25社局合同で、12月1日〜「プラットホーム事故0(ゼロ)運動」を始まりました。これは忘年会などの飲み会が多い時期だからこそ、鉄道会社各社が対策を打とうということです。

国土交通省が出している資料によると、ホームにおける人身障害事故の発生件数(平成14~26年度合計)は、12月が一番多く、曜日別では金曜日、時間帯では23時と、まさに年末忘年会後に帰宅する時間帯に多く発生していると言えます。

首都圏ではホームドアを設置する駅も増えてきたが、これには高額なコストが発生するため、大阪ではベンチの向きを90度変え線路と垂直になるように工夫しています。これは酔った人が突如立ち上がり、そのまま真っ直ぐ歩いて線路に落ちてしまう事例が多いことが判明したのでその対策として実施されています。

 


 

外国人の意見

人によるかもしれないけど、国によってはお酒に強い地域もあります。酔っ払ってもハッピーにうるさくなるだけだったりしますが、日本人は路上で寝てしまったり、とっても警戒心が薄いと思う。それだけ安全な国というのが良いところかもしれないけど、女の子が1人で酔って電車で寝ているのを見ると、「誰が友達は送らないの?」と心配になります。

 

 

④会社のオリジナルカレンダーを配る

年末の挨拶回りでオリジナルカレンダーを配る会社も少ないのではないでしょうか?
時には宅配便にて段ボールに大量のカレンダーが送られてくることもあります。
また壁掛けカレンダーや卓上カレンダーなどバリエーションに富んだ会社もあります。

もともと企業カレンダーが誕生した背景は、暦というのは家庭内に入りやすく、1年間365日使って貰えることから、新聞・ラジオ・テレビ・雑誌などの広告枠と比べて、保有性が格段に高く情報媒体としては最高と言われていました。

海外では買うのが当たり前ですが、日本ではカレンダーは貰うものというイメージも強いです。

 


 

外国人の意見

海外では企業がオリジナルのカレンダーを作って配るというのは見ません。大量に作って配り、捨てられているのを見ると、紙の使い方がもったいないかな、とも思う。クオリティも高いから、タダでもらえるのは嬉しいけどね。

 

 

 

【年始 -new year- 】

①年賀状がくる・出す

会社によっては総務が社内から年賀状出し先を集計し、一括で送る手配をしてくれるところもあります。とくに営業部署では同じ取引先であっても各担当者1人1人に出す場合も・・・

また上司や同僚に年賀状を出す習慣は、個人情報保護の観点から今では会社として廃止しているところもあります。本来年賀状は年明けに直接挨拶に伺えないことから、年賀状で年初めの挨拶をすることが目的です。

年賀状の歴史は古く、平安時代に学者である藤原明衡が作った手紙が日本最古の年賀状と言われています。江戸時代になると付き合いが広くなり、「年始回り」の代わりに書状で挨拶を済ませることも増えていきました。新年を祝う書状を届けるのには飛脚が活躍したということです。

明治4年に郵便制度開始し、明治6年には郵便はがきの発行が始まりました。それらをきっかけに明治20年頃には年賀状も激増し、昭和24年にお年玉付き年賀状が開始されると国民的行事として認識されるようになりました。

 

 

 

外国人の意見

実は欧米でもクリスマスカードとは別に「happy new year card」というのはあるけれど、送るのは友達とか家族とかで、ビジネスでは使わないです。日本では元旦に届かないと怠慢と思われてしまうけど、そこもしっかりしているな、と感じます。クリスマスカードはみんな11月ぐらいから用意して、クリスマス前に届けばOKです。

 

 

②日本の小売はお正月が大忙し

「初売りセール」に「福袋」。元旦から買い物に繰り出す人も少なくないのではないでしょうか?イベントとして定着している部分もありますが、便利なのか、元旦くらい休むべきではないのか、と元旦営業には賛否両論あるようです。

1980年代前半までは、1月4日以降に初売りを行う小売店がほとんどでしたが、年中無休で24時間営業のコンビニやファーストフード店が増えた現在では、スーパーマーケットや専門店での元日の初売りも珍しくなくなり、元日は休業するほとんどの小売店でも1月2日には初売りを行っています。

今年は働き改革の影響もあり伊勢丹が、三が日を休業すると言って話題になりましたが、それを撤回し1月2日から初売りをスタートすることになりました。

 

 

 

外国人の意見

どこもお店が開いていて驚きます。欧米ではクリスマスの25日と、1月1日は絶対に小売やレストランも営業していません。例えばスペインではクリスマスプレゼントはサンタさんからもらうのではなく、東方の三騎士(Tres Reyes Magos)から1月6日にもらいます。通常その後から冬のセールが始まるので、日本のような「元旦初売りセール」はないですね。

 

 

まとめ

同期が外国人・プロジェクトリーダーが外国人・外国人のOJTをすることになった、なんてどこの会社でも当たり前になるかもしれません。そんな時に、外国人から「日本ではなぜこれをするの?この意味は?」と普段私たちが何気なく毎年の恒例として行っていることを改めて質問されたら、どうしましょう。

日本人としてその文化や背景を説明できる必要があるかもしれません。
この記事に書いた外国人からの意見はほんの一部の意見にすぎません。だからこそ、日本人も外国人も働きやすい職場を目指して、お互いの文化・考え方を尊重し、相互理解を深めていければと思います。

(スペインではカウントダウンと同時にぶどうを12粒食べるとか!面白い!)

来月もお楽しみに!

参考
http://www.myprecious.co.jp/oseibo/column/manner001.html
https://wanosuteki.jp/post_19437
http://www.mlit.go.jp/common/001111902.pdf
http://www.postcard.jp/nenga/column/01nenga-yurai.html

 

natsumi sato
コミュニケーション&ブランディングチーム。
英語はできないけど、ジェスチャーで乗り切る能力は高め。
パンとサーフィンと編み物が好き。

 


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