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越境 EC で利用できる決済サービスと選び方のポイント解説

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奥原 雅也

世界の EC 市場の成長に伴い、越境 EC は市場拡大の戦略として今後ますます注目を集めていくでしょう。越境 EC サイトを構築するときの課題はいくつかありますが、大きな壁は「物流」「言語」「決済」の3つです。その中でも特に、決済は利便性や取引の安全性に大きな影響を与えるので重要です。

この記事では「決済」に焦点を当て、越境 EC サイトを構築する上で押さえておきたい決済サービスや導入時の検討ポイントを説明します。

越境 EC 構築の大きな課題

越境 EC サイトを構築する際の課題は、大きく分けて「物流」「言語」「決済」の3つがあります。

物流

海外と物のやり取りをする時には、関税や運搬費などが発生します。これらのコストや面倒な手続きをどのようにクリアするかがポイントです。コストは販売する商品によって大幅に変わるので、EC サイトを構築する際に大きな課題となります。

言語

海外ユーザーに向けて情報発信をする場合、サイトの多言語化が必要になります。共通語としての英語で情報公開を行う企業も多くありますが、より多くのユーザー層を取り込もうとすれば、ターゲットの市場に合わせて他の言語への翻訳も検討が必要です。
越境 EC サイトの多言語運用については「越境 EC 多言語運用 4つのポイント」の資料をご覧ください。

越境 EC で多言語対応に成功している事例:株式会社トゥモローランド様

EC サイト売上の内、2%弱が海外からの購入であったため、多言語対応が必須となったトゥモローランド。
EC サイトならではの更新頻度についてこれるサービスとして、WOVN.ioを導入しました。導入前後の同時期の海外と日本の購入者を比較してみると、日本の3、4倍以上の海外リピーターを獲得しています。

→事例詳細:「海外リピーター増加率が日本語の4倍以上!取引先・顧客・従業員のグローバル化に伴い EC を多言語化。

越境 EC で多言語対応に成功している事例:株式会社ヤギ様

EC サイトで多くのサプライヤーの情報を掲載し、Web 上で生地サンプルや在庫数を確認しながら自身で注文・決済まで完結できるように対応。スピーディーにテキスタイルの情報を英語で届けることで、海外からも評価いただける EC サイトを実現しました。

→事例詳細:「日本のものづくりの魅力を世界に。テキスタイルの B2B EC サイトの英語化でグローバル取引を加速させる取り組みとは

決済

越境 EC を行う場合、どのような決済方法を用意するかが課題となります。国・地域が違えば決済方法も大きく異なるので、現地で一般的な決済手段は何かを事前に調査することが重要です。物流・言語の課題をクリアしても、馴染みがない決済方法であれば購入をやめてしまう可能性もあります。

なぜ越境 EC で決済方法が重要になるのか

ターゲット市場で販路を拡大するためには、現地のユーザーに合った決済サービスを選択するのが大切です。どれだけ商品が魅力的でも、利用しやすい決済サービスがなければ購入に繋がらない恐れがあるからです。越境 EC の場合、ユーザーははじめて名前を知った Web サイトから商品を購入することもあるでしょう。もし使い慣れていない決済方法の場合、問題なく商品が届くか、支払いは問題なく完了したか、クレジットカード情報などの個人情報は保護されているかなど、ユーザーがさまざまな不安を抱く懸念があります。

国・地域によって、よく使われている決済方法は違います。日本で主流の決済方法を選ぶだけでは不十分で、ターゲット市場に合わせた決済サービスを選択しないといけません。例えば、台湾ではクレジットカードに次いで、コンビニでの商品受け取り時に決済するコンビニ払いが主流です(※1)。このため、コンビニ払いに対応していないと、売上の機会を失ってしまうかもしれません。ターゲットの国・地域で馴染みのある決済方法を事前にリサーチし、導入を検討する必要があります。

※1 参考文献:impress BUSINESS MEDIA 台湾の最新EC事情~決済・物流編~
https://netshop.impress.co.jp/node/7089

越境 EC にどのような決済方法があるか

主な決済方法にはどのようなものがあるか、特徴とともにいくつか紹介していきます。

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クレジットカード

クレジットカードは EC サイトで広く利用されている決済方法です。自宅で決済が完了し、商品が配達されるのを待つだけのため、ユーザーにとって利便性が高く利用しやすいです。EC サイト運営者にとっては代金の回収率が高く便利なメリットがあります。

第三者支払いサービス

第三者支払いサービスは、第三者の決済サービスを介した決済方法です。クレジットカード情報や銀行口座情報を EC サイト運営者に直接伝えずに決済ができます。日本ではまだ広く利用されていませんが、海外では主流の支払い方法の1つで、「PayPal(ペイパル)」や「Stripe(ストライプ)」がよく利用されています。クレジットカードに比べ導入も簡単です。

デビットカード

デビットカードは、使用した直後に口座から代金が引き落とされる決済方法です。ATM での引き出しと同じ感覚で利用できるため、クレジットカードなどの後払い方法と比べ「使いすぎ」を防げるのがメリットです。日本でのデビットカードでのキャッシュレス決済率は0.92%と高くはありません(※2)が、アメリカなど、利用率の高い国・地域もあります。

※2 参考文献:経済産業省 2021年のキャッシュレス比率
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220601002/20220601002.html

電子マネー

電子マネーは、現金をデジタル化して利用できる決済方法です。現金をあらかじめチャージして支払うプリペイド式(前払い)と、決済分を口座やクレジットカードから引き落とすポストペイ式(後払い)があります。日本では店舗での決済の際に「Suica(スイカ)」などの交通系電子マネーを利用する方もいますが、市場の大きな中国とアメリカの越境 EC サイトではあまり利用されていません(※3、※4)。

口座振込/ネットバンキング

口座振込は、指定された口座に料金を振り込む決済方法です。ATM や銀行経由での振り込みの他、最近ではアプリ上でも振り込みが可能となっています。日本ではよく利用される決済方法ですが、市場の大きな中国とアメリカの越境 EC では一般的ではありません。(※3、※4)

代金引換

代金引換は、商品受け取り時に宅配業者が代金を回収する決済方法です。個人情報やクレジットカード情報を EC サイト運営者に伝えず購入ができるためユーザーにとって安心です。市場の大きな中国とアメリカでは利用率は高くない(※3、※4)ものの、台湾など一部の国・地域では利用率が高いため、ターゲット市場に応じて利用を検討すべきでしょう。

※3 参考文献:日本貿易振興機構 中国の越境 EC
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2017/12/a93c240657c03189.html

※4 参考文献:経済産業省 電子商取引に関する市場調査 P.121
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/h29reportv3.pdf

アメリカと中国本土で代表的な決済サービス

EC 市場の規模が世界トップの中国本土と、それに続くアメリカの主流の決済サービスを見ていきましょう。

中国本土

オンラインショッピングが盛んな中国では、クレジットカードはあまり普及していません。主流はアリペイや WeChat Pay などの第三者支払いサービスです。続くのは、デビットカードの機能を有する銀聯(ぎんれん)カードです。中国生まれのカードで「UnionPay」とも呼ばれます。中国本土のオンライン決済は、アリペイと銀聯がシェアの大半を占めます(※3)。

※3 参考文献:日本貿易振興機構 中国の越境 EC
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2017/12/a93c240657c03189.html

アメリカ

アメリカで主流の支払い方法はクレジットカードです。他の支払い方法と比べて利用率が圧倒的に高いです。次に利用率が高いのはデビットカード、そして第三者支払いサービスの PayPal が続いています(※4)。アメリカをターゲットとしている場合は、支払い方法にまずはクレジットカードを導入するのがいいでしょう。

※4 参考文献:経済産業省 電子商取引に関する市場調査 P.121
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/h29reportv3.pdf

決済サービスを選ぶ際のポイント

決済サービスを選択する際に考慮すべきポイントは「ターゲット市場に合った決済方法か」だけではありません。

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ターゲットの国・地域

中国本土・アメリカの例で見たように、国・地域によって主流の決済方法は異なります。商品を届けたい国・地域に合わせた主流の支払い方法を選択すれば、サイトの利便性が向上し、商品を購入するユーザーが増えることで、売上増加にもつながるでしょう。

コスト

利便性向上のために決済サービスを充実化するにあたっては、自社にとって無理のない決済サービスを選択することが重要です。決済サービスの利用には運用コストが発生するためです。コスト負担も考え、継続が可能な決済サービスを選択しましょう。

セキュリティ

決済サービスのセキュリティが弱ければ、情報の漏えいにつながる懸念もあります。自社の情報やお客様の個人情報が漏えいしてしまうと、決済代行サービス会社の信用だけでなく、自社の信用も失なってしまうので、セキュリティも重要な検討ポイントです。

越境 EC で決済を受ける際の注意点

越境 EC で決済を受ける際は、日本で EC サイトを展開するときの決済と異なるため考慮すべき点があります。

為替変動

越境 EC では、為替変動のリスクに注意する必要があります。サイト上で日本円を表示し、日本円で入金される場合は問題ありませんが、現地の通貨で販売する場合は、売上を日本円に両替する際に為替変動のリスクを抱えます。円で販売する場合は、商品を購入するユーザーが為替変動の影響を受ける可能性があります。

関税

越境 EC では、商品の輸出入による関税が発生するため、関税にも配慮が必要です。取り扱う商品の関税を把握し、関税率や関税見込額を明記するなどの工夫をしましょう。そうすることで、返品や受け取り拒否などの関税トラブルを防ぐことができます。

まとめ

越境 EC サイト構築の際には、国内向けの EC では考慮不要だったさまざまな課題が発生しますが、その中でも特に重要な点が「決済」についてです。ターゲット市場のユーザーにとって使い慣れている決済方法が用意されていないと、購入まで至らず売上につながりません。決済サービスのコストやセキュリティなどの観点も考慮し、ターゲットの国・地域に合った決済方法を選択しましょう。

 

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